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Hypertension

高血圧

高血圧について

高血圧とは、血圧が常に高い状態が続く病気です。自覚症状がないことが多いことから「静かなる殺し屋」とも呼ばれ、放置すると脳卒中や心筋梗塞などの重大な合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
日本人の多くが、高血圧か高血圧の予備軍であると言われています。厚生労働省の調査によると、20歳以上の日本人の約2人に1人が高血圧か高血圧の予備軍であるというデータもあります。これは、食生活の欧米化や運動不足など、生活習慣の変化が大きく影響していると考えられています。

高血圧の診断基準

成人における血圧値の分類(mmHg)

分類収縮期血圧(最高血圧) 拡張期血圧(最低血圧)
正常血圧<120 かつ <80
正常高値血圧120〜129 かつ <80
高値血圧130~139 かつ/または 80~89
I度高血圧140~159 かつ/または 90~99
II度高血圧160~179 かつ/または 100~109
III度高血圧≧180 かつ/または ≧110
(孤立性)収縮期高血圧≧140 かつ <90

(JSH20191)18頁 表2-5より引用)

※ 但し、血圧は1日のうちでも大きく変動し、緊張したときや運動をしたときには血圧が大きく上昇したりします。
一時的に血圧が正常範囲を超えて上昇するというのは正常な反応であるため、高血圧とは呼んでいません。

各病態における降圧目標(mmHg)

75歳未満の成人*1
脳血管障害患者(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし)
冠動脈疾患患者
CKD患者(蛋白尿陽性)*2
糖尿病患者
抗血栓薬服用中
<130/80<125/75
75歳以上の高齢者*3
脳血管障害患者
(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり,または未評価)
CKD患者(蛋白尿陰性)*2
<140/90<135/85

(JSH20191)53頁 表3-3より)

*1 未治療で診察室血圧130-139/80-89mmHgの場合は、低・中等リスク患者では生活習慣の修正を開始または強化し、高リスク患者ではおおむね1カ月以上の生活習慣修正にて降圧しなければ、降圧薬治療の開始を含めて、最終的に130/80mmHg未満を目指す。
すでに降圧薬治療中で130-139/80-89mmHgの場合は、低・中等リスク患者では生活習慣の修正を強化し、高リスク患者では降圧薬治療の強化を含めて、最終的に130/80mmHg未満を目指す。
*2 随時尿で0.15g/gCr以上を蛋白尿陽性とする。
*3 併存疾患などによって一般に降圧目標が130/80mmHg未満とされる場合、75歳以上でも忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満を目指す。降圧目標を達成する過程ならびに達成後も過降圧の危険性に注意する。過降圧は、到達血圧のレベルだけでなく、降圧幅や降圧速度、個人の病態によっても異なるので個別に判断する。

高血圧の症状

高血圧は、初期の段階では自覚症状がないことが多いですが、進行すると、頭痛、めまい、動悸、息切れなどの症状が現れることがあります。
しかし、これらの症状は、他の病気でもみられるため、高血圧と結びつけるのは難しい場合があります。

高血圧の原因

高血圧になる原因は、遺伝的な要因や、生活習慣が大きく関わっています。塩分の過剰摂取、高脂肪食、アルコールの過剰摂取、運動不足、喫煙、ストレスなどが、血圧を上昇させる要因となります。
また、腎臓病や内分泌疾患、睡眠時無呼吸症候群などが、高血圧の原因となることもあります。

高血圧の診断基準

診察室血圧

医師のいる診察室で測定した血圧です。
収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合は、高血圧と診断されます。

家庭血圧

自宅で毎日同じ時間に測定した血圧の平均値です。
診察室血圧よりも、日常生活の中でリラックスした状態で測定するため、より普段の血圧に近い値を記録できます。家庭血圧の基準は、診察室血圧よりも少し低い値が用いられます。
収縮期血圧が135mmHg以上、または拡張期血圧が85mmHg以上の場合は、高血圧と診断されます。

家庭血圧の測り方

高血圧の代表的な合併症について

高血圧が危険とされるのは、生命に関わる重大な合併症を引き起こす可能性があるためです。
特に「脳」と「心臓」に関する疾患は、注意が必要です。

脳の合併症

代表的なものに脳梗塞・脳出血・血管性認知症などがあります。

脳卒中(脳梗塞・脳出血)

高血圧は、脳の血管に直接的なダメージを与え、**脳卒中(脳梗塞・脳出血)**の大きな原因となります。

脳梗塞 : 脳の血管が動脈硬化や血栓(血のかたまり)によって詰まると、脳への血流が遮断され、脳細胞が死滅します。これにより、言語障害、麻痺、意識障害などの症状が出ます。

脳出血 : 高血圧が続くと、脳の血管がもろくなり、破れて出血することがあります。出血が広がると命に関わる危険な状態になることもあります。

血管性認知症

高血圧による動脈硬化が進行すると、脳の細かい血管が詰まり、血管性認知症を引き起こすことがあります。このタイプの認知症は、アルツハイマー型認知症とは異なり、記憶障害だけでなく、歩行障害や感情の起伏が激しくなるといった特徴も見られます。

心臓の合併症

代表的なものに心不全・狭心症・心筋梗塞などがあります。

心不全

高血圧の状態が続くと、心臓は常に高い圧力に耐えるために働き続けることになり、心筋が肥大し、徐々に機能が低下します。
その結果、心不全を引き起こし、最終的には心臓が正常に血液を送り出せなくなる危険性があります。

狭心症・心筋梗塞

高血圧が続くと、心臓の冠動脈(心臓に酸素や栄養を供給する血管)にも動脈硬化が進行し、血流が悪くなります。これにより、心臓に十分な酸素が届かなくなり、胸の痛みや圧迫感を引き起こす狭心症を発症することがあります。
さらに血管が完全に詰まると、心筋の一部が壊死し、致命的な心筋梗塞につながる危険性があります。

腎臓の合併症

代表的なものに慢性腎臓病(CKD)・腎不全などがあります。

慢性腎臓病(CKD)

腎臓は血液をろ過して老廃物を排出する役割を担っています。
しかし、高血圧によって腎臓の細かい血管がダメージを受けると、腎機能が低下し、慢性腎臓病(CKD)を発症するリスクが高まります。

腎不全

慢性腎臓病が進行すると、腎臓が十分に機能しなくなり、最悪の場合、人工透析が必要となる腎不全の状態に至ることがあります。

予防方法について

高血圧は、生活習慣の改善によって予防・管理が可能です。
以下の生活習慣を心がけましょう。

適正体重の維持(減量)

肥満の人は高血圧のリスクが2~3倍になると言われています。体重を適正に維持することで血圧を下げる効果が期待できます。

内臓脂肪の蓄積が特に血圧上昇の原因となるため、ウエスト周囲径を意識した管理を行いましょう。

適度な運動

ウォーキング・サイクリング・水泳などの有酸素運動を週3回以上、1回30分以上行いましょう。
筋力トレーニングを適度に取り入れると、基礎代謝が向上し血圧管理に効果的です。

塩分の摂取を控える

1日6g未満を目標に、減塩食を意識しましょう。
加工食品や外食は塩分が多いため、控えめにすると良いです。
昆布や柑橘類などを活用し、風味を活かした減塩調理を工夫しましょう。

禁煙と節酒を心がける

喫煙は血圧を上げ、動脈硬化を促進するため、禁煙を推奨します。
アルコールは適量(日本酒1合、ビール500ml程度)を守りましょう。

ストレス管理

質の高い睡眠を確保しましょう。
趣味やリラックスできる時間を意識的に作ったり、深呼吸や瞑想で交感神経を落ち着かせることも効果的です。