Diabetes
糖尿病
糖尿病について

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が慢性的に高くなる病気です。体内でエネルギーとして利用されるべきブドウ糖が適切に細胞に取り込まれず、血液中に蓄積してしまうことにより、高血糖状態が続きます。
主に1型糖尿病と2型糖尿病に分類され、1型糖尿病は自己免疫機能の異常によって膵臓のインスリンを分泌する細胞が破壊されることにより発症し、2型糖尿病はインスリンの作用が低下するインスリン抵抗性や、分泌量の低下が原因となります。
現代の食生活の変化や運動不足、高齢化が背景にあり、日本における糖尿病の有病率は年々増加傾向にあります。糖尿病は初期には自覚症状が少ないものの、適切に管理されないと重大な合併症を引き起こす可能性があるため、早期発見と適切な治療が極めて重要です。
糖尿病の症状
糖尿病の初期症状は軽度で気づかれにくいことが多く、健康診断や定期的な血液検査で偶然発見されることも少なくありません。
高血糖が持続すると、喉が渇きやすくなり水分を多く摂取するようになったり、頻繁に尿意を感じるようになります。
また、食事を十分にとっているにもかかわらず体重が減少したり、倦怠感や疲労感を感じやすくなることもあります。
神経障害や腎機能障害、血管障害といった合併症を引き起こすこともあり、症状が現れる前の段階での診断・治療が求められます。
糖尿病の原因
糖尿病の発症には、さまざまな要因が関与します。
1型糖尿病は自己免疫疾患の一種であり、免疫系が誤って膵臓のβ細胞を攻撃し、インスリンの産生が著しく低下することで発症します。
一方、2型糖尿病は遺伝的な要因に加え、生活習慣の乱れが大きく影響します。特に肥満や過食、糖質の過剰摂取、運動不足がインスリン抵抗性を引き起こし、血糖値を適切にコントロールできなくなります。
また、ストレスや睡眠不足も糖尿病の発症リスクを高める要因とされています。
糖尿病の診断基準
糖尿病の診断は、血液検査によって行われます。
具体的には、空腹時血糖値が126 mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の2時間後の血糖値が200 mg/dL以上、または随時血糖値が200 mg/dL以上の場合、糖尿病と診断されます。また、ヘモグロビンA1c(HbA1c)が6.5%以上である場合も糖尿病の診断基準を満たします。
これらの基準のいずれかが該当し、かつ自覚症状や他の検査結果と整合する場合、糖尿病と確定診断されます。
ヘモグロビンA1c(HbA1c)について
ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、過去1〜2か月間の血糖値の平均を反映する指標であり、糖尿病の診断や治療の経過観察において重要な役割を果たします。血糖値は日々の食事や運動によって変動しますが、HbA1cは長期間の血糖管理状態を示すため、安定した指標となります。
正常値は4.6〜5.7%とされ、6.5%以上で糖尿病の可能性が高いと判断されます。HbA1cが高い状態が続くと、血管や神経にダメージを与え、合併症のリスクが高まるため、目標値を維持することが非常に重要です。
血糖コントロール目標について
糖尿病の治療において、血糖コントロールの目標値は患者の年齢や合併症の有無、生活状況によって異なります。
日本糖尿病学会では、合併症の予防のためにHbA1cを7.0%未満に保つことを推奨しています。さらに、血糖値の正常化を目指す場合は6.0%未満が理想的とされますが、高齢者や低血糖リスクのある患者では無理のない範囲でのコントロールが求められます。
日常生活の中で血糖値の急激な変動を避け、安定したコントロールを行うことが重要です。
糖尿病の治療法
糖尿病の治療は、食事療法、運動療法、薬物療法の3つを基本として行われます。
食事療法では、バランスの取れた食事と適切なカロリー摂取を意識し、糖質の過剰摂取を控えつつ、食物繊維を多く含む食材を積極的に摂ることが推奨されます。
運動療法は、血糖値の改善やインスリン感受性の向上に有効であり、適度な有酸素運動や筋力トレーニングを継続することが重要です。
薬物療法では、経口血糖降下薬やインスリン注射が用いられ、患者様の病態や治療の進行状況に応じて適切な治療法が選択されます。
治療の目標は単に血糖値を下げることだけでなく、長期的に合併症を防ぎ、患者様の生活の質を向上させることにあります。
糖尿病は適切に管理すれば、健康的な生活を維持することが可能な病気です。日々の生活習慣を見直し、定期的な検査と医師の指導を受けながら、より良い血糖コントロールを目指していきましょう。